セロトニンが役割を果たせずにいると、心と身体に影響を及ぼします。その影響は何処まで及ぶのでしょうか

セロトニンの役割

脳内物質

セロトニンの役割は、精神や身体をコントロールする三大神経伝達物質の1つ。脳内の僅か2%の分泌で他の神経伝達物質を上手く調整、抑制しています。セロトニンの不足が自律神経に影響し、情緒不安定などの精神的な影響や不眠症など身体に悪影響を与えます。

これらの影響が更にセロトニンが不足する要因となるため、不足してしまった要因を取り除かない限り、セロトニン不足による悪循環を繰り返してしまいます。

精神や身体に多大な影響を与えながら、食事や生活環境、ストレスなどでセロトニンの分泌が抑えられてしまうため、生活環境を改善させる必要があります。食事から栄養を摂取する事が難しい、日光などを浴びてセロトニン生成を促す事が困難な夜型の生活など現在の生活環境を変える事が困難であれば、薬などを用いて少しずつ回復できるように症状を抑えつつ、改善に努めましょう。

セロトニンとは

太陽

セロトニン不足がうつ病を発症する原因になると近年テレビや雑誌で見かけます。セロトニンは主にどういった働きをするのかご紹介します。

体内分布されている、セロトニンの90%が腸内にあるとされ慢性的便秘や下痢、便通異常や腹部不快感、主に消化管の働きに作用すると言われています。残りの8%が血小板にあり、血液中を循環します。血中内での働きには止血作用や血管収縮作用などがあり、血管収縮作用は肩こりや片頭痛の原因の1つとされています。

残り僅か2%が脳内に分布されており、その2%の働きが鈍る、不足するなどして人間の精神面に対しての影響は多大なものです。しかし、濃度が高すぎる場合、セロトニン症候群という中毒症状も起きてしまうため、人間の精神安定には、この2%のセロトニンが適度な状態に保たれる事によって決まります。痛覚の抑制や記憶力、学習能力にも影響を及ぼし咀嚼、呼吸などの反復運動機能にも作用します。

セロトニン不足に陥った場合、以下の様な症状がみられます。
疲れやすい、やる気が出ない、集中力が欠ける、イラつき、感情的、落ち込みやすいといった精神的影響や、食欲がなくなる、不眠、肩こり、片頭痛などの肉体的影響など。買い物やギャンブルなどの様々な依存症が起きる原因にもなり、統合失調症やうつ病、パニック障害といった症状が現れます。こうした症状が起きやすい人は日頃から緊張状態やプレッシャーを多く抱える事も影響します。

不足した場合に有効な手段が、太陽光を浴びる事。太陽光を浴びる事により交感神経は活性化します。脳内で分泌を促進されたセロトニンが体内時計のリセットを行ってくれるので、緊張状態やプレッシャーなどで眠りが浅い、寝付けないなどが起こっている場合は、太陽光を浴びるなどしセロトニンを増やす事もおすすめです。朝日や太陽光を浴びて生活を行う事は人間が生きていく上でも必要な事にも関わらず、現代社会では昼夜逆転の生活が当たり前の状況や、大人子供関係なく深夜まで起きる事が日常化しています。睡眠時間が不足するとセロトニンも不足するという事態を招いています。

昼夜逆転生活、テレビやスマホ、PC操作など長時間労働や過度な緊張状態や筋肉への負荷、睡眠不足や運動不足も原因とされ、こうした外からのプレッシャーによりセロトニン不足を促しています。特に対人から与えられるストレスは慢性的になりやすいため、これらが原因で過食傾向に陥り太る事もセロトニン不足が原因の1つです。

セロトニン(神経伝達物質)の働き

作業プロセス

セロトニン不足が脳や身体に多大な影響を及ぼすと簡単にまとめましたが、脳に分布される僅か2%のセロトニンの働きが他の神経物質に対し、どのような影響を与えるのか引き続きご紹介します。

セロトニンの主な役割は精神を安定させ、脳内の危機管理を担うノルアドレナリン、快感を伝達する役割を持つドーパミン、この2つの物質の暴走を抑制しバランスを保つ大変重要な役割を持ち、この3つは「三大神経伝達物質」と言います。

神経伝達物質は脳内の情報を行き来させる必要な物質です。主な働きは以下の通りです。

セロトニン

精神安定・意欲(脳の奥にある脳幹にあり、三大神経伝達物質をコントロールし、咀嚼、呼吸、歩行など運動機能・生命活動に関与します。) 分泌不足に陥ると、パニックを起こし、ぼんやりしたり、うつっぽくなります。投薬などによる過剰分泌は精神の不安定、発熱、発汗、震えという「セロトニン症候群」という症状が起きます。

呼吸、発汗、体温調節、心臓、消化などを調整する自律神経の働きを制御する役割を持ちます。息切れ、動悸、冷え性、低血圧といった身体的症状、情緒不安定、不眠症といった心因性の症状は、多くが自律神経に影響を及ぼしています。精神と身体に多大な影響力のあるセロトニンですが僅か2%でこれらの調整役を担っているため、不足したり過剰な分泌を起こすと精神と身体両方に問題を生じさせます。

ドーパミン

快感・喜び・攻撃(向上心、目的意識、記憶や学習能力、運動機能にも関与。)
分泌不足から無気力、無関心、運動・学習・性機能低下のおそれがあります。
ドーパミンの不足がパーキンソン病の原因だと言われており、過剰な分泌は統合失調症、過食症、様々な依存症を起こす事もあります。

ストレスを受けると快感を得られる手段(食事、飲酒、煙草、運動)を用いてドーパミンを分泌させ、ストレス解消させます。慢性的に過度なストレスを受けると、解消しなければと快感を得られやすい手っ取り早い方法を用いるようになります。更に過剰分泌により依存症にもなりやすいのです。

ドーパミンは渇望・欲望というストレスを生み出し、望みが達成できない間は意欲やモチベーションとして保ち続ける事ができます。同時に望みが達成されるまではストレスともなるので、渇望や欲望が行き過ぎてしまうと犯罪をしてでも目的を達成しようとする可能性もあります。

ノルアドレナリン

不安・恐怖・怒り・意欲(生存本能や交感神経を刺激する事で心身の覚醒を促す働きを持ちます。)
分泌不足になると無気力・無関心、意識低下、うつ病の原因の1つだと考えられています。 精神と身体に与える不快な刺激(苦痛、悲しい、辛い、痒い、暑い、寒いなど)にストレスを感じると、ノルアドレナリンが分泌されます。

過剰な分泌はイラつきや短気、怒りっぽくなり躁状態を起こしたり、血圧上昇により高血圧症や糖尿病のおそれもあると言われています。

セロトニン不足は、精神バランスが崩れ、日常生活に多大な影響を起こします。セロトニンはこれら神経伝達物質の中で重要な抑制役を務めています。他2つの神経伝達物質の過剰分泌により食欲や性欲が抑制できず、飲酒や煙草、ギャンブルに依存しやすくなります。セロトニン不足は憂鬱な気分、そわそわしたり、無気力という気分への影響もありますが、衝動的な行動や依存性のある行動を抑えていた働きまでなくなってしまいます。

セロトニントランスポーター

本から得る知識

これら神経伝達物質は脳内で情報をやり取りしているため、普段からその働きを目にする事はありません。精神に影響するのならばそれ位自分でコントロールできないのかと考える人もいるでしょう。セロトニンが不足すると影響が出るのは精神面だけではありません。身体に与える影響として、痛みを感じにくいよう痛覚を抑える働きがあります。

うつ病を患う人が全身広範囲に渡って覚えのない痛みを感じたりする事があるのは、痛覚抑制機能が衰えてしまい、関節やその周囲の骨・筋肉などに痛みを感じる線維筋痛症や疼痛を起こしている可能性があります。本来なら痛みを感じない程度の事でも痛みを感じてしまうため、痛みを伴っている部分を調べても異常は見つかりません。

命に関わる事ではないだろうと、理解を得られない人から怠け病などと言われる事もありますが、この痛みが酷くて仕事や学業だけでなく日常生活にも支障を来すため、思うように身体を動かせない事もあります。欧米では1900年代の初め頃から認知され始めてきたものの、日本国内の医療機関では線維筋痛症の認知度はまだ低く、つい30年程前にリウマチ性疾患に似た症状はあるのに関節の腫れや変形はない原因不明の痛みがあると記述され始めました。

認知度が低いために誤解を受けやすく、医療機関でもMRI検査などを行っても診断する事ができず、気のせいだと片付けられてしまう事もあります。痛みの箇所は移動したり気候や過度なストレスでも痛みの度合いが変化するため、積極的な治療が行えません。1990年にアメリカリウマチ学会が発表した診断基準を参考にして診断されますが、線維筋痛症だと判明しても治療法が確立していません。

精神疾患と言えば、過去のトラウマや精神的に多大なダメージを受けた人が発症すると思われがちですが、日常生活を行っているごく一般的な人にも起こりうる可能性はあります。身体を傷つけるような怪我をすれば、出血、鬱血、腫れなど、見た目わかりやすい分、身体に起こった怪我がどの程度なのか判別でき、この程度なら問題は ないと判別しやすいでしょう。

身体に起こった怪我と異なり、精神に受けたダメージやトラウマは、他者と比較したり目に見えない分、精神に受けた傷やプレッシャーを本当の意味で理解してあげる事は自分自身以外できません。他者から見ればなんて事はないつまらない事であっても、精神にダメージを負った本人にとっては、立ち直れないほど辛い事もあります。

それまで育った環境や人間関係では、自分自身の中で上手く処理できる事は限られています。人によっては当たり障りのない言葉や、何気なしに放った一言で精神に深いダメージを負う事もあります。

人によって精神的・身体的にかかる負荷が異なる理由は、これまでの経験や環境以外にも理由があります。セロトニンを運搬する役割を持つセロトニントランスポーターという遺伝子の働きが弱いと、セロトニンの働きも弱まってしまいます。

LL型(セロトニン伝達力が強い)、SL型、SS型(セロトニン伝達力が弱い)の3つの型の遺伝子のうち最もセロトニントランスポーターの遺伝子の動きが弱いのはSS型。日本人に多いのはSS型と言われています。以下のように日本人と欧米人を例にすると、日本人に多いのがSS型なのが分かります。

セロトニントランスポーター(セロトニンを運搬する遺伝子)
人種 伝達力が低い 伝達力が標準 伝達力が高い
日本人 SS型(68%) SL型(30%) LL型(2%)
欧米人 SS型(19%) SL型(49%) LL型(32%)

※このデータは欧米人がストレスを抱えない、我慢をしないという結果ではありません。あくまで伝達力の異なり方を表した表です。

セロトニンは、精神や身体をコントロールする三大神経伝達物質の1つです。脳内にあるたった2%の神経物質が、私達の身体や心を統制している。俄かには信じがたいものですが、神経伝達物質と日本人や欧米人の考え方や体質の違い、それらを視野に入れるとそういえば、と心当たりになるような出来事があるかもしれません。

幼い頃から愛情を注ぎながらも自立を促して育てる欧米人と、幼い頃から家族や親戚と密接な関係を築き共感性や助け合いを教育に取り入れる日本人。教育としてどちらが正しい、正しくないとは一概には言えませんが、自分の目的のために我慢をする事と、誰かのために我慢をする事、ストレスの感じ方は大きく異なります。大人になってしまうと、子供の頃の様に喜怒哀楽を豊かに出す事ができるのは、日本人より欧米人の方が上手なのかもしれません。

限界まで我慢し続けて突然、疲れた・・・と感じる様な我慢の仕方を、日本人は無意識のうちに行ってきたのではないでしょうか。遠慮や謙遜、我慢強さは日本人の美徳と言われますが、それでも感情的になっていい場面は大人になってもあります。理不尽な扱いを受けても我慢してしまう癖が付いているのでは、少しずつ感情を出していく練習も必要になるでしょう。

ぶつけ方さえ間違えなければ、怒りをぶつけるのは悪いことではありません。ストレス発散に誰かに怒りをぶつけるのは正しくはありません。誰にも迷惑をかけない方法で発散すればいいだけです。ストレス発散は運動が最も適していると言われます。自分の健康にも繋がり、周囲からの評価も上がり、ストレスも発散できる、一石三鳥の良い方法ではないでしょうか。

カルフォルニア大学で行われた実験では、人間の感情が3分の1程は遺伝子に左右されるが、残り3分の2は外部の要因で決まると実験で判明しています。遺伝子で既にストレスを感じやすいと記述はしましたが、日本人の中にもストレスに強い人も多くいますし、おおらかな人も、ストレスが気にならない人もいます。

ストレスの感じやすさは遺伝子だけで決定付けられる物ではありません。栄養面や食事、運動に気を配る事でセロトニンは増やす事もできるため、乱れた生活環境を整える事でセロトニンも働きやすい環境にする事もできます。これらを適切な環境に整える事が困難な状況であれば、薬などで整える方法もあるので自分に合う薬を探してみましょう。

セロトニン症候群

必要な物だけ選択

脳内のセロトニン濃度は2%、たったこれだけの脳内物質で人間の心や身体、意識はコントロールされています。不足するとうつ病や集中力低下、睡眠不足にも繋がる重要な物質ですが、逆に濃度が高くなるとセロトニン症候群という症状を起こします。

主な症状は不安、混乱、いらつきなどですが、最悪のケースを辿ると死に至る事もあるので、楽観視はできません。更に、興奮状態、手足・眼が勝手に動く、身体の震え・固くなる、発汗、発熱、下痢などの症状も発生する事もあります。

SSRIなどの抗うつ剤はセロトニン再取り込み阻害薬として有名な薬です。SSRIのようにセロトニン再取り込み阻害薬を大量摂取したりすると、セロトニン症候群を引き起こすとしられています。特定の薬によって起こるセロトニン症候群ですが、何もSSRIだけに注意が必要と言うわけではありません。

セントジョーンズワートというサプリメントはご存知でしょうか。うつ症状に対して利用されるサプリメントですが、海外(ドイツ、オーストラリア)では処方箋が必要になる医薬品です。人体へ及ぼす作用はハッキリと解明はされていませんが、SSRIなどと似た働きがあると見ていいでしょう。医学の進んだドイツなどで医薬品として取り扱われている以上、たかがサプリと軽視は出来ません。数あるサプリメントの中でもセロトニンに対する影響が強く、セロトニン症候群が最も多く発生しやすいと言えます。

SSRIを服用している方、これから服用使用かと思っている方にとっては、怖い薬というイメージが付いたかもしれませんが、適用量を守っていれば起こるような症状ではありません。あくまで、メーカーが推奨する用量・用法を超える服用の場合には注意が必要になります。良い薬となるか、劇薬となるかは服用者次第です。

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